渋谷

学者は未来を見据えない。ミネルヴァの梟は、必ずや黄昏を待って飛び立つ。認識を求めるものの視線は常に過去に注がれている。未だ来ざるものを我々が見ることはできないのだ。我々は過去を見つめながら後ろ向きに歩き続ける。

我々は天使ではないから、開いた翼を嵐にとられるわけでも、目前にただ破局のみを認めるわけでもない。できることなら後ろを向いて、はるか後方にあるはずの、未来という名の出来事をしかとこの目で見つめたい。けれども、どれだけ力を振り絞っても、人間である限り、頸をぐるりと回してしまうことなどできはしないのだ。

それでも、我々は未来へ向かって踏み出さなければならない。後ろ向きではあるけれど、できるかぎりの一歩を。