先週の金曜日に発生して欧州を騒がせたオスロのテロは、最終的に、反多文化主義のノルウェー人極右が単独犯で起こしたものであると言うことのようだ。事件の様相に関しては、以前まとめた二つの記事を参照してほしい。

事件発生当初、情報がまだ出回っていなかった頃は「イスラームの国際テロ組織アルカイダの犯行ではないか」という反応が大勢を占めていた。しかし、「拘束された男が白人である」という情報が入ってからは徐々に趨勢が変化し、最終的にはノルウェー人による単独の犯行であると言うことが一日たつとほぼ確定した。以下、いくつか興味深かった事実を覚え書き程度に記しておく。

「テロリスト」か、「銃撃犯」か?

日本の報道機関は多く「テロ」と名指して報道している(例:asahi.com:移民・イスラムに敵意 ノルウェー、テロ容疑者大量声明 – 国際)が、英語で手に入る情報は多くが「ノルウェー銃撃事件 Norway shooting」や「ノルウェー攻撃 Norway attacks」という名称を利用している(例:BBC News – Norway Attacks)。当初は英語のものも「テロ」として報道されていたことを考えると、これは非常に興味深い現象である。少し穿った見方をすれば、「ムスリムが行えば彼はテロリストだが、白人が行えば彼は銃撃犯と呼ばれる」ということである。

ウトヤ島

犯行がウトヤ島で行われたということはかなり象徴的な意味を持っているようである。Savage Minds の記事によれば、ウトヤ島は労働党の青年支部 (AUF) によって所有され、現在の首相であるイェンス・ストルテンベルグ氏も青年時代サマーキャンプをここで行ったことがあるという。数百人もの政治的意識を持った若者が政党の主催するサマーキャンプに参加すると言うことは、イギリスではもちろん、日本では考えにくいことである。

北欧におけるナショナリズム

あまり日本では知られていないことかもしれないが、北欧諸国は非常にナショナリズムの強い場所である。人類学で言うバナル・ナショナリズム─日常において幾度も現れ、そのたびに再強化されていく類のナショナリズム─が強烈に存在する。国旗の掲揚や北欧内部での対抗意識もそうであるし、何よりも「小さな国ノルウェー」という意識がとても強い。今回の事件を受けた言説にも、そのようなバナル・ナショナリズムがよく見て取れる。それは、同じナショナリズムとは言っても、東日本大震災以降の日本におけるそれとは多少性質を異にするものである。

多文化主義への反発と欧州的文脈

アンネシュ・ブレイビクの犯行は、彼が記した長い長いマニフェストで示されているように、多文化主義への反発が根本にある。すなわち、これは親イスラームではなく反イスラームによる犯行なのである─当初多くの分析官が考えたこととは真逆である。ブレイビク容疑者は多文化共生の考え方を憎悪し、そのような政策を自らのマニフェストの中では「文化的マルクス主義」という言葉で批判している。その一方で礼賛されているのが日本である。Japan Probe の記事によれば、彼の組織「テンプル騎士団 Knights Templar」が理想とする社会は「日本および韓国、あるいは台湾モデル」で、社会の同質性に基礎を置くものであるという。

欧州における右翼勢力の増大は幾分か前から問題になってきてはいたが、この事件はそれが一つの臨界点に達したものと見ることもできるであろう。最近になってイギリスのキャメロン首相やドイツのアンゲラ・メルケルなども以前からの多文化主義的な政策を批判し、英国においては移民への規制がますます強まっている(ところでこの路線で修士課程を修了した学生に対する Post Study Work Visa が撤廃される。私はギリギリ申請できるが、2011年入学の学生は申請が不可能になってしまう)。次回のフランス大統領選では国民戦線のマリーヌ・ル=ペン(娘)が有力候補という。この事件は、このような文脈の中に位置づけて紐解かれなければならない。

すなわちこれは、単なる「頭の狂ったローン・ウルフ」による犯行なのではない。これはデュルケム的な意味で「正常」な犯罪であって、社会全体の傾向を示すものとして分析されなければならない。今後、益々欧州情勢の注視が必要であろう。