以前からおもしろく読んでいる中国嫁日記に、加齢臭の話が掲載されていた。井上氏によれば、耳の後ろをていねいに洗うことでかなりの程度加齢臭は抑えることができるという。しかし、それは何故なのか?

そもそも加齢臭というものは、加齢によって増加した皮脂中の脂肪酸が酸化・分解したことによって発生する2-ノネナールという物質が原因であるらしい。

人間の体臭には様々な成分が関わっている。ここで吾々は加齢による体臭の変化について研究した。26歳から75歳までの被験者の体臭をヘッドスペース・ガス・クロマトグラフ質量分析法によって分析した結果、脂のようなまたは草のような臭みのある2-ノネナールが40歳以上の被験者にのみ見つかることがわかった。さらに、皮表脂質の分析によって、ω-7不飽和脂肪酸および脂質過酸化物も加齢によって増加し、体臭内の2-ノネナールの量と皮表脂質中のω-7不飽和脂肪酸または脂質過酸化物の量に正の相関があることもわかった。2-ノネナールが生成されるのは、脂質過酸化物を酸化連鎖反応の開始剤として利用し、皮表脂質の主要な成分が酸化的に分解されるような減成試験によって、ω-7不飽和脂肪酸が減成された場合のみであった。これらの結果が示すことは、(a) 2-ノネナールはω-7不飽和脂肪酸の酸化的減成によって生成されること、(b) 加齢による体臭の変化に2-ノネナールが関与しているであろうこと、である。

(2-Nonenal Newly Found in Human Body Odor Tends to Increase with Aging 拙訳)

もしノネナールがω-7不飽和脂肪酸の分解によって発生するのであれば、とくに耳の後ろにω-7不飽和脂肪酸が多く含まれているということでない限り、耳の後ろを洗うことによる加齢臭の激減には繋がらないはずである。しかし現実にはこの療法の効果は高い。何故か?

考えられることはおそらく、「耳の後ろを洗うこと」が根本的な解決策なのではないということだ。重要なのは、「耳の後ろ洗うこと」なのではないか。日常生活を営む上で、耳の後ろは最も洗われない部位のひとつであるはずだ。他の主要な身体部位は、入浴の際に洗われてしまうが、耳の後ろや足の指の間といった部位は、洗われずに終わりやすい。髪を洗っていても、耳の後ろまできちんとこするという人はそういるわけではあるまい。洗われずにおくことによって最終的にそこで発生するノネナールの量が他の部位よりも多くなってしまうのだろう。

まとめる。加齢臭の対策は、耳の後ろのみ洗っていれば良いというわけではない。きちんと風呂に入り、まんべんなく体を洗うことこそが、加齢臭の根本的な対策なのだ。

しかし──人間であれば多少臭うのは当たり前、年を取ってくれば更にそうである。近代文明の中で生きる我々は、自らの排泄物をもう少し尊ぶことを学んでも良いのではないか。あまり過剰に反応されては、どうも困る。