3年暮らした。

その街は大きく、数多くの人間がそこで蠢いていた。住んでいる間、幾度もその街についてまとまった文章を書こうとしたが、相変わらずミネルヴァの梟は黄昏の訪れと共にしか飛び立たない。

これほど不快な街はなかった。そこではすべての時間が積み重なることなくただ流れ行き、人間たちはお互いをモノとして扱うことで情報量の膨大さを何とかして縮減しようと努力していた。過去を知らず、未来を信じないものが、模倣された欲望を握りしめて糞尿を垂れ流す、そのような場所であった。

あの戦争に負けたことでこの列島に齎されたうち最も醜悪なものがその街を支配している。それを覆す術はわたしにはない。そこで育った生命体を救い出そうとしても、それはもうその街の外では生き続けることができなくなっているのだ。

しばらくの空しい努力ののち、わたしはゲリラ戦を諦め、都市の観測に徹することにした。その結果として判明したことは、先程述べたとおりだ。歴史のない街。出自の構造的忘却と本質の半ば恣意的な無視。現実によって提示された困難をさしあたって回避するためのほとんどアクロバティックな思考停止。模倣された欲望の絶え間ない再生産と感染。

あの街から脱出して、どこへ行くのかは知らない。ゲームマスターの用意したシナリオに何が書いてあるかは、プレイヤーには公開されていない。ただ、場面ごとに、最善と思われる選択をし続けるだけである。