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Brexit: EU離脱投票でイギリスはどこへ行くのか?

いわゆる「Brexit」をめぐる英国の国民投票で離脱派が多数を占めることが確定して数週間が経過した。イギリスの政治は明らかに混乱している─離脱派の政治家たちは実際に離脱派が勝ったことを寧ろ残念がっているようだ(UKIP党首ナイジェル・ファラージは職を辞したし、元ロンドン市長ボリス・ジョンソンは現首相キャメロンの後釜を選ぶ選挙に立候補しなかった)し、残留派の保守党も労働党も完全に混乱に陥っている(保守党党首かつ現首相デイビッド・キャメロンは辞職を表明し、労働党党首ジェレミー・コービンは議員たちから不信任投票を行われた)。スコットランドは再度独立投票を行う可能性を示唆しているし、ロンドンも独立に向けたペティションが行われている。1ポンドの価値は160円台から130円台にまで急落したし、ポンドの格付け自体も最高であるAAAから落ちることとなった。

その中で政治的に興味深い動きがひとつあるとすれば、Constitution Reform Group であろう。CRGは超党派の団体で、現在の中央集権的な連合王国を解体し、イギリスを複数の地域からなる連邦的国家を作りなおすことを提案している。スコットランド、北アイルランド、ウェールズ、そして勿論イングランドはそれぞれ主権を持ち、議会を持ち、そしてその上で政治、外交、国防と経済に関する主要な制度を共有することになる。具体的には、軍隊や通貨、外交員、所得税、官庁などの基礎的な制度的インフラ郡である。これが実現すれば、連合王国を構成するそれぞれのネーションは、今よりも遥かに自由に自らを治めることができる。

実際これは良い提案だと思うが、これで(例えば)イングランドのみが欧州連合を離脱し、スコットランドは残留するといったようなことが可能かどうかは正直微妙であると思う。そもそも欧州連合の側がそういったメンバーシップのあり方を認めるかどうかは不明瞭であるし、仮にそうなった場合、スコットランドとイングランドの間に国境管理所ができることになれば、相当異様な事態である。勿論イギリスの市民権を持っているものは移動することができたとしても、管理があること自体がある程度移動の自由を阻害する。通貨についても、その政策がどの程度欧州によって影響されるのかがわからない。

以下、FAQに対するまとめ。

Q. 三行で今までの経緯をまとめてくれ

グレートブリテン及び北アイルランド連合王国(通称イギリス)は、欧州連合を離脱するか否かを問う国民投票を6月23日に実施した。結果は 52% 離脱 (1741万票) – 48% 残留 (1614万票) となり、離脱が多数派。投票率は 72% だった。首都であるロンドン、スコットランド、北アイルランドでは残留が多数派であった一方、イングランドとウェールズのほとんどでは離脱派が多数であった。

Q. これで英国の欧州連合離脱が確定したのか

否。厳密に言えば、英国の欧州連合離脱がまだ確定したわけではない。英国は議会主権主義であり、この国民投票の結果に厳格な法的拘束力はない。だから、庶民院が正式に欧州連合離脱を決議するまでは、欧州連合離脱のプロセスを始める法的な必然性はないのである。だが、政治的には、国民はその意思を示したのであって、それを無視することは難しいだろう。

Q. どうして離脱派が勝ったのか?

一概に原因を特定することは難しいが、大きな原因は、普段労働党に投票している労働者階級の人々が離脱に票を投じたことであろう。労働党の議員たちは基本的に皆残留派であったが、例えば伝統的に労働党が強いはずのウェールズや、北イングランドなどでは圧倒的に離脱派が多数であった。

ある労働者は、「カネがあるやつは残留派、カネがないやつは離脱派」と言ったという。ステレオティピカルな言説だが、移民労働者によって職が奪われているという確信が多くの労働者階級の人々にはあるようだ─それが真実かどうかは別として。

また、40代以下は残留を支持する一方で、50代以上の人々は離脱支持派が大多数であり、また後者の人々のほうが投票率が高い、ということも一員であろう。階級間だけではなく、世代間でも対立があったということである。

Q. そもそもどうして国民投票を実施したのか?

保守党の内部的な政治の結果である。伝統的に英国においては欧州懐疑派と呼ばれる人々がそれなりに強く、そういった人々、及びまた欧州懐疑派による政党である英国独立党(UKIP)支持者などから信任を得るための手段としてキャメロンは国民投票を使ったといえるという認識だ。勿論彼は当初本当に離脱派が多数を占めるとは思っていなかっただろう。

ところで日本の参院選は与党の大勝に終わったようである。それぞれの政党のマニフェストを読んでいても、もはや我々には自ら立党する道しかないのではないか、とわたしは思うし、実際、ありうるマニフェストを作ってみても良いかもしれない。

独立党の支持者は他の国の料理を食べない

The Guardian に少し面白いデータが出ている。連合王国独立党の支持者に関する統計である。

  • 「他の国の食べ物をよく試す」と答えた人の割合が最低(51.2%)。
  • 「他の文化や国に興味がある」と答えた人の割合が最低(55.3%)。
  • 「ソーシャル・メディアを使わない」と答えた人の割合が最高(28.2%)。

どの項目についても、正反対の極にいるのは緑の党の支持者であるらしい。また、なかなか面白いことに、最初の二つの項目については、

独立党 — 労働党 — 保守党 — 自民党 — 緑の党

という並びになっている。ただし、労働党と保守党の差は殆どない。

「NHK 経営委員、南京大虐殺を否定」を BBC が報じる

まったく意外性のない話だが、さらっと訳す。BBC News – Governor of Japan broadcaster NHK denies Nanjing massacre である。

[追記]: The Guardian は、Japanese broadcaster’s board member praised ritual suicide of rightwinger と題して、百田氏の発言にも触れながら、長谷川三千子氏による右翼活動家の自殺を礼賛する追悼文を報道している。


NHK 経営委員、南京大虐殺を否定

日本の公営放送である NHK の経営委員が、南京大虐殺を否定。NHK 会長の従軍慰安婦をめぐる発言も記憶に新しい。

この発言は、百田尚樹氏によって、東京都知事選挙に出馬した右翼候補を支持する演説の中でなされた。

百田氏は著名な小説家で、12人いる NHK 経営委員の一人。昨年末、安倍晋三首相によって選出された。

朝日新聞によれば、百田氏は、「1938年に蒋介石が「日本軍が南京大虐殺をした」とやたら宣伝したが、世界の国は無視した。なぜか。そんなことはなかったからだ」と述べた。

戦争において虐殺はどちらの陣営によっても行われており、そのようなことを日本の子供らに教える必要はない、と彼は続けたという。

同新聞によれば、この発言は2月3日、東京での街頭演説中になされた。

この報告について、日本の菅義偉官房長官は、「報告は聞いているが、(個人的な意見の表明は)放送法に違反しない」と述べ、政府としてのコメントを避けた。

放送法は、政党の役員が経営委員になることを禁止しているが、党員に関してはこの限りではなく、他の政治的活動に対する制限もない。

百田氏の発言は、籾井勝人新 NHK 会長が、日本軍による慰安婦の利用は戦時中どの国でも行われていた、と発言した数日後になされた。

会長は「そういった女性は戦争をしている度の国にもいたし、フランスやドイツもそうだ」と述べ、国際的な怒りに関して「不思議だ」のコメントした。

その後彼は謝罪し、「ルールに関する理解を欠いていた。私の思慮不足で、あのようなコメントをしたことは大変不適切だった」と言った。

中国は、1937〜8年の冬に日本軍が南京入りしてから、およそ30万人の市民と兵士が殺害されたと主張。日本の歴史学者の中には、この数字に関して論争を行なっているものもいる。


日本の右傾化はどこまで行くのか。

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