このゲームは一般的に思われているような疾走ゲームではない。これは脱出ゲームなのだ。ただ一点、脱出が永遠に叶わないということを除いて。

脱出ゲームなのだから、脱出できなくてはならないと誰が言った?脱出してしまったら、ゲームが終わってしまうではないか!だからCanabaltは最終的な到達点というものを作らない。否、明示的な出発点というものすらない。ジャケットの男は自分がなぜ走っていつかもわからず走り始め、まだ見ぬ安全地帯へ向かう虚しい努力を続ける。この疾走が虚しいのは、このゲーム世界に安全地帯など存在しないからだ。男はいつか死に、プレイは、男の人生と共に、そこで終わる。

永遠に叶わない脱出。プレイヤーがひとたび画面をタップすれば、男はまた疾走を始めなくてはならない。何から逃げるのかも知れずに。走り、死ぬだけのゲームに囚われた男。

作成者はプレイヤーを楽しませるために様々な死に方を用意している。ビルに衝突し、落ちて死ぬことが最も多いだろう。しかし死因はそれだけではない。クレーンに飛び乗ろうとして失敗することができる。不意に落ちてくる爆発する何かに当たって霧と化すことができる。窓へ飛び移ろうとして壁に衝突することができる。崩れゆくビルから飛び移れず、地に落ちて死ぬことができる。どの死に方を選びたいかね。お好みでどうぞ。

なんと意地の悪いゲームなのだろう。疾走感を演出させるためだけに流れる音楽。背景で蠢く巨大な怪物。モノクロの色調とレトロなドット絵も異物感の演出に一役買っている。iPadを購入しておきながらこれを遊んでいない輩に羨望すら覚えるほど、このゲームは絶望感を演出し、あなたの時間を浪費する。

A true masterpiece.