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ソチ五輪: ソトニコワはどこでキム・ヨナに差をつけたか

ロシアのソトニコワがフィギュアスケート女子シングル戦でソチオリンピックの金メダルをとってから、その採点が公平であったか否かという点が議論になっている。「キム・ヨナの加点は異常だ」という話は以前からあったが、今度は「ソトニコワの加点は異常だ」という話になっていて、興味深い。

ソトニコワのコンビネーションジャンプ

ソトニコワのコンビネーションジャンプ (New York Times)

わたしがフィギュアの採点がいかにしてされるかについてきちんと理解しているとは言えないが、議論百出の中、New York Times の記事が面白かったので紹介する。

女子シングル・フリーのレギュレーション

まずは女子シングルのレギュレーションを確認しておこう。

ジャンプ

  • 7回まで
  • アクセルジャンプは必ず1回以上。2回転アクセルは2回まで。
  • コンビネーションジャンプ・ジャンプシークエンス3回まで(3連続ジャンプは1回のみ)。
  • 3回転・4回転ジャンプのうち、2種類だけを2回繰り返すことができる。そのうち1回は、必ずコンビネーション、またはシークエンスに組み込まれたジャンプであること。

スピン

  • 3回まで
  • コンビネーションスピン1回:足換え1回以上。合計10回転以上。
  • フライングスピン、もしくはフライングから入るスピン1回:6回転以上。
  • 単一姿勢でのスピン1回:6回転以上。
  • 3つとも異なる種類(異なる略記号)のスピンであること。

ステップシークエンス

  • 1回まで
  • リンク全面を使用すること、ジャンプを入れることも可。

コレオグラフィックシークエンス

  • 1回まで
  • ステップシークエンス後に行うこと。
  • あらゆる種類の動作で構成される(ステップ、ターン、スパイラル、イーグル等々)。
  • 少なくともスパイラルを1回含むこと。長さは任意。

フィギュアスケートにおける採点について云々する前にはまずこれを頭に入れておこう。
さて、以下がソトニコワとキム・ヨナの得点の差分である。

ソトニコワ > キム・ヨナ

エレメント ソトニコワ キム・ヨナ 差分
二回転-三回転コンビネーション 9.94 6.50 +3.44
フットワーク 5.60 4.44 +1.16
レイバックスピン 3.77 3.04 +0.73
三回転コンビネーション 8.43 7.83 +0.51
チェンジフットコンビネーションスピン 4.71 4.21 +0.50
トリプルサルコウ 5.82 5.52 +0.30
トリプルフリップ 6.80 6.50 +0.30
ダブルアクセル 4.70 4.42 +0.28
フライングコンビネーションスピン 4.56 4.43 +0.13

キム・ヨナ > ソトニコワ

エレメント ソトニコワ キム・ヨナ 差分
追加トリプル 6.70 7.60 +0.90
トリプルルッツ-トリプルトゥ 11.10 11.70 +0.60
スケート技術、演技構成 74.41 74.50 +0.90

こうしてみると、ほぼすべての要素に関して、ソトニコワがキム・ヨナよりも多く得点したことがわかる。

二回転 – 三回転コンビネーション

特に大きな差分を見せたのは二回転 – 三回転コンビネーションジャンプであるようだ。

キム・ヨナのコンビネーションジャンプ (New York Times)

キム・ヨナのコンビネーションジャンプ (New York Times)

これに関しては、以下のことがポイントとしてあげられている。

  • 基礎点の差異。ソトニコワがダブルアクセル (2.3点)・トリプルトゥ (4.1点) = 6.4点を飛んだのに対し、キム・ヨナはトリプルサルコウ (4.2点)・ダブルトゥ (1.4点) = 5.6点を飛んだ。
  • 出来栄えの良さ。ソトニコワは速度や高さ、流れをうまくこなしたが、キム・ヨナはジャンプ後減速した。
  • ソトニコワは後半にこのコンビネーションを持ってくることで基礎点をさらに +10% 追加した。

フットワーク及びレイバックスピン

両者のスピンの比較 (New York Times)

両者のスピンの比較 (New York Times)

また、フットワーク及びレイバックスピンにもかなりの差分が出た。これに関しては、以下の点が指摘されている。

  • 基礎点の差異。ソトニコワは難易度4 (2.7点) だったのに対して、キム・ヨナは難易度3 (2.4点) のレイバックスピンを廻った。また、ステップシークエンスに関しても、ソトニコワは難易度4 (8.0点) のものをこなしたのに対して、キム・ヨナは難易度3 (6.5点) であった。
  • 出来栄えの良さ。レイバックスピンでは、ソトニコワが速度と密度を維持したままポジションを変えていったため、審判は高い評価を下した。

それぞれの要素に関して、審判の判断が妥当なものであったかはともかくとして、仮にレイバックスピン及びステップシークエンスにおいてキム・ヨナが多く得点したとしても、上記の二回転 – 三回転コンビネーションジャンプにおける大きな得点差を覆すのは難しそうである。

なにはともあれ、各選手お疲れ様でした。

冬季オリンピック 2014: 「ゲイのいない街、ソチへようこそ」

この記事は、Winter Olympics 2014: Welcome to Sochi – a city where ‘there are no gay people’ の適当訳である。多少語尾をロシアっぽくしたが概ね原文ママだ。正確性は保証しないので、引用したい奴は原文を参照しろ。


プーチン大統領は 2014 年冬季オリンピックへのゲイの参加を歓迎すると主張したが、そのメッセージをソチ市長へと伝えたものはいなかったようだ。アナトリー・パホモフ市長は、BBC のドキュメンタリ「パノラマ」の取材でソチを訪れた我々に「この街にゲイはいない」と能書きを垂れた。

プーチン氏はまた、国際オリンピック委員会とともに、ジャーナリストがソチを訪問することを歓迎する声明も出しているが、ロシアの安全保障組織 FSB の兵士は私を含む「パノラマ」クルーを拘留し、パスポートを押収しやがった。

ロシア南西部に位置するこのビーチリゾートについて何かしら知っている人間であれば、パホモフ氏の主張が全くの嘘であることは誰にだって分かる。前ソチ市長選で敗北したボリス・ネムツォフにこの発言を伝えたところ、「ソチにゲイがいないだって?全く信じられん!」と腹を抱えて笑い出してしまったくらいだ。

「ゲイに対するヤバい偏見がある場所もあれば、そう悪くない場所もあるってこと」とは、街で一番のゲイ・バーにパフォーマーとして勤めるドラァグ・クイーンのミス・チューチャの言。注意深くフレージングされているが、ゲイがこの街に存在することを指し示している。

パホモフ氏が「パノラマ」に対して述べたところによれば:「我々のホスピタリティはロシア連邦の法律を守り、自身の性癖を他者に押し付けない限り、全員に与えられる」。「ソチではゲイは自身のセクシュアリティを隠さねばならないってことか?」と問うと、市長は「いいや、好きにしたらいい、自分の人生だからな。だが、ここで許容されるとは思うな。我々の街には、奴らはいないんだから。」と言い放った。

私が反論すると、彼は自身の発言を撤回し、「確たる証拠はないが、俺は一人だって知らないね」と主張を弱めた。

現場の取材をしようとするとすぐに、キンキラに固められたオリンピックのメッキが剥がれだす。我々は、アクシュティア Akhshtyr 村の検問所を通りがかった時だ。昔から別に大した場所じゃなかったんだろうが、今ほど醜くなかっただろう─オリンピックの建材に使うための石を切り出すための採石場がクソのようにそびえ、その穴を今度は燃えないゴミで埋め立てるという。大型トラックが一時も途切れずあちこちを走り続け、我々の車のそばを邪魔そうに走り抜けるたびにエンジン音が轟いたが、我々は動くこともできなかった。

兵隊は FSB の奴らだった。兵隊長が「お前らは通れねえ」とロシア語でがなる。しかし、我々だって仕事だ。通らねばならない。沿岸のオープニング会場と山側のまっさらなリゾートを結ぶ幹線と鉄道は 50 億ポンドかかると言われ、ルイ・ヴィトンのバッグで舗装したってそんなにかかるわけなかろうと批判者は言う。村人が言うには、この幹線のせいで村からソチには行けなくなったそうだ。行政はバイパス・ルートを作ると約束したが、それが日の目を見るのはいつになるやらわからない。だから、村人みんな─学童もだ─泥んこの道を以前よりも一時間多くかけて運転しなけりゃならない。

私は兵隊長を睨み返して、「プーチン大統領が国際オリンピック委員会と約束したはずだ。ジャーナリストのソチへの訪問は歓迎されている」と言ってやった。同僚のニック・スターディーが通訳すると、兵隊長の表情に少し不安がよぎる。彼は若く、ブロンドで、大きな銃を持っていたが、大統領を引用した異邦人と一悶着起こしたいわけではなかった。

彼はパスポートを押収し、「おまえらがジャーナリストだとどうやってわかる?」と我々の地位に疑問符を付した。我々はロシアのマスコミ用パスを持っていなかった─3週間前に申請を行ったにもかかわらず、モスクワの外務省が我々の写真を印刷できず、そのことを我々に伝えることもしなかったからだ。

私は国際オリンピック委員会に電話し、FSB が我々のパスポートを押収したと文句を言ってやった。すると、役人から電話がかかってきて、アクシュティアにロシアのマスコミ用パス無しで立ち入った我々を責めだした。やれやれ…

結局、FSB は我々のパスポートを返してくれなかったが、足で検問所を通って村人を撮影することを許可した。村人たちは採石場について文句を言った。これはロシア鉄道によって所有されているもので、社長のウラジーミル・ヤクーニンはプーチン氏の友人だという。市長が言うには、この村の問題はオリンピックのあとで解決されるだろうということだ。

FSB の検問所に戻ると、奴らはパスポートを返却するためには我々が「国境地帯」に違法に侵入したことを認める書類にサインしなければならないと言い出した。意味がわからない。言い合いの後、FSB の一人が、「私はサインしない」という書類を作り、そこにサインするというのはどうか、と提案してきた。全く馬鹿げたことだが、それが終わると、我々は一応自由だった。

ソチ・オリンピックに関して言えば、見かけと中身が一致するものは何もない。例えば─プーチン大統領は大会開始直前、元億万長者石油王のミハイル・ホドルコフスキーや、パンク・バンド「プッシー・ライオット」を含む囚人 2000 人に対して恩赦を言い渡した。これはロシア政府がその抑圧的傾向を正そうとしている仕草だと受け止められるだろうか?

「ムーングレイド」の話をしよう。これは山上にある秘密基地で、ヘリコプターによってのみアクセスが可能だ(ジェームズ・ボンドの映画に出てくる悪役の根城みたいだろ)。昔国立公園だった場所に作られたこの施設は、公式には気象研究所だが、どうやら大統領用の秘密のスキー・ロッジらしい。

環境活動家のエフゲニー・ヴィティシュコはムーングレイドに行ったことがある。「ウラディーミル・プーチンはあそこをあんまり気に入ったんで、そこに別荘をつくることにしたんだ」という。ヴィティシュコはこの近郊にロッジが建設されることに反対する運動を起こしたことがある。「この別荘に対する熱狂はまったく馬鹿げていて、戦わねばならないものだ─我々はまさしくそうしている。裁判所がそれを罪だと認めたとしても」

ヴィティシュコはフェンスに落書きを行った疑いで起訴された。本人は否認しているが、判決は禁錮3年だった。彼が言うには、これは彼のプーチン氏に対する抗議運動に起因しているという。大統領はソチ・オリンピックは環境にやさしいものになると約束したが、現状はご覧のとおりだ。

プーチンは、ソチ・オリンピックを尋ねるジャーナリストにとって、それは「忘れられない」経験になるだろう、と言い切った。まったくそのとおりだ─度重なる停電、まったくばかげた拷問、蔓延する汚職、武装秘密警察によるパスポートの押収、どれもまったく忘れがたいものだった。

ソチは変わった。オリンピックに向けた建設プログラムは総額 300 億ポンド、2010 年のバンクーバーでかかった費用の 25 倍だ。ネムツォフはこの大会が「史上最も汚職にまみれたオリンピック」だという─プーチン氏もパホモフ氏も否定しているがね。

2012 年にはこの街では 1000 回の停電があった。なぜか?オリンピック・リゾートを山中に建設するために電力を使い切っちまったからさ、と批判者は言う。我々も滞在中のホテルで停電を経験した。ろうそくを抱えてうろつくのは楽しかったが、プーチンが演出しようとしている近代化された強国のイメージとはかけ離れたものだ。

労働者はまともな給料が払われないと文句を垂れている。それに声を上げた電気技師マルディロス・デメルチャンは、捏造された罪状で警察に拘留されたという。

「やつらはふたりでおれを両方から殴り始めた。おれは床に倒れて、意識を失いかけたが、やつらはおれを起こして椅子に座らせたんだ。ひとりが、「おい、もう満足か?それともまだ殴らにゃならんか?」と言うんだ」

それから彼は拷問され、鉄の棒で性的な陵辱を受けた。彼は警察を訴えようとしているが、警察は彼を名誉毀損で訴えた。

人生の明るい面を見れば、FSB に拘留されたことはこの国で何が起こっているのかを理解するにはよい経験だった。当局は笑顔の仮面を被っているが、ふとした瞬間にそれがはずれると、警察国家の尻尾がちらりと見えるのだ。

John Sweeney reports on Putin’s Games for Panorama, on BBC One Monday night at 8.30pm


ロシアの人名に関しては自信がないので、正確な日本語表記を教えていただけるとありがたい。

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